今から10年位前の年長組の思い出話です。5月と11月の記録簿の中に「逆上がり」の項目がありました。ただ子どもにやらせてみてチェックするに過ぎません。「練習もしないでできるようになる訳がない」と思っていた当時、副担任だったＡ先生が翌年、念願の年長組の担任となり、とことん逆上がりにこだわりはじめました。毎日、朝の集会の後に鉄棒練習をはじめたのです。
5月には1〜2人程度しかできませんでした。特に教え方を専門的に知っている訳ではなく、とにかく手伝って無理矢理にでも回すといった練習を毎日続けました。自分でも「先生が手本を見せなくては」と子ども達と一緒に一生懸命練習しました。
やった成果がでたのは、夏明けの9月。半分の子が一人でできるようになりました。これまでになかった人数です。先生も毎日見て教えている内に、指導のコツをつかみ、あれよあれよと人数が増えていきます。できた時の子どもの表情がたまらなくて、「よし全員！」と、Ａ先生は卒園までに100％を目指し、11月の記録簿をつけた後も欠かさず続けました。
2学期に入り、あと10人。できる子ができない子を一生懸命に手伝うようになりました。そして強く友情の芽生えを感じ、望外の保育効果を得て歓喜感にひたりました。
この頃に、保護者の方も応援に入り、「逆上がりタオル」なるものを作って、子どもに持たせたり、家に帰ってからも近くの公園で練習したり、皆一丸となった取り組みに発展していきました。
2月になって残り2人。そしてついに卒園直前に全員達成。年長組43名が100％逆上がり成功が実現しました。皆抱き合い、Ａ先生の目には涙が溢れていました。