2009年8月
お手伝い
 お手伝いで育つ豊かな心

●お手伝いで感じる家族の一体感
「私達の子どもの頃はよくお手伝いをしたものなのに、この頃の子どもはちっとも家の手伝いをしてくれません」と言うお母さんからのお話をお伺いすることがあります。確かに私自身も幼児期に経験したお手伝いの数々をはっきり、それも甘く懐かしい思い出として記憶しています。庭掃き、買っていた鶏やウサギのエサやり、布団の綿入れ、おつかい、食事の手伝い、風呂炊きなど、昔は今のように便利な電化製品もあまりありませんでしたので、暮らしていくために必要なものはほとんど手作りであり、家事についても時間のかかる大仕事でした。ですから子どもたちも必要に迫られてお手伝いをやっていたのです。けでどもその記憶の中には、常に母の温かい後ろ姿とお手本があり、兄弟同士の励ましや助け合いがあり、いざという時のために出番を待っている威厳を持った父の存在がありました。子どもながらに家族の一体感を身体に感じ、うれしく思えたものです。それが今なお甘く懐かしい記憶として残っているゆえんでありましょう。

●幼児期にお手伝いの体験を
今の子どもたちがお手伝いをしなくなったのは、生活が非常に便利になり、お手伝いを必要とする場面が少なくなったからともいえるかもしれませんが、子どもにも早くから個室が与えられ、個人が尊重される現代だからこそ、日常生活の中で家族みんながそれぞれできることをやり合い、役割を担いながら協力して暮らしているという一体感や喜びを、幼児期に経験させてあげることは非常に大切なことだと思います。
お子さんにお手伝いをしてもらうと最初の間は時間がかかったり、物を壊したりして、かえってお母さんの手を煩わすことになるかもしれません。お手伝いよりも勉強の方が大事だと思われるかもしれません。けれどもお手伝いによって、お子さんは人間として最も大切な心をきっと育んでくれるはずです。優しさ、思いやり、社会性、自立心、創造性など、体験の中から得られる学習を、今一度見つめ直してみましょう。お母さん、お子さんたちはお手伝いの出番を待っていますよ。

第二あけぼの保育園 園長 矢島里美

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